アナザー・ラブレジェンド
-夕暮れの道を-



今回の登場人物 →





-本日はカーアホームセンターにご来店ありがとうございます
  カーアホームセンターでは、我々店員が…-

 「ねえ、お兄ちゃん!この布でいいんだよねー?」
 「う~ん、お客様用のお茶はこれでいいかしら?」
 「ああ、今行くよ。」

 俺はさんま。元学生だ。
 少し前にいろいろあって、まともな職には就けなくなった俺は恋愛相談所をやる事になった。
 まあ、客はそれほど多いわけではないが、その分俺の女達と一緒に過ごせる時間が多くなって俺も女達もそれ程この状況を憂いていなかったりする。…いや、むしろ楽しんでいると言ってもいいだろう。
 俺は今日は休日を利用して、ともみとミキで隣町の日用雑貨店に買物に来てい る。

 「じゃあ、お茶請けも必要だねー!」
 「ミキちゃん、できるだけ日持ちのするのをお願いね。」
 「はーい。」
 …え?そんなことより、何で俺がこんな所にいるのかって?
 俺達の恋愛相談所はとりあえずで作られた(看板を出しただけとも言うが…) ものだから、もう少し見栄えを良くする為にいろいろな物を買い揃えに来たというわけさ。

 「流石に女達のプライベートな空間を例え客だろうがエロースみたいなスケベ 野郎に見せるわけにはいかないしな。」
 「…? 何か?」
 突然考えを口に出してしまった俺を怪訝そうな面持ちのともみがのぞきこむ。
 「うん?いや、今晩のともみの手料理が楽しみだなと思っただけさ。」
 「ふふ…うんと腕を振るから残さず食べてね。」
 女に余計な心配をさせてはいけない。それが愛する女なら尚更だ。
 「お兄ちゃーん!お茶請け持って来たよー!」
 「ああ、ありがとう、ミキ。」
 もちろん、この後にミキと愛を分かち合ったがそこは割愛だ。

 会計を済ませ、俺は二人とオープンカフェでの静かなひと時を楽しんでいた。
 まさに至福の時間だ。
 やはり仕事をした後、愛する女達とゆったりと過ごすのは格別だ…。
 
 「ともみー!ともみー!」
 至福の時をガラガラと音を立てて見事にぶち壊すような声。
 …そう、ヤツだ。
 「今日こそ、ともみを返してもらうぞ!」
 ともみの前の夫、ひろしである。
 何故、ともみのような女がこんな男と結婚するに至ったのかはこの町の七不思議でもある。
 「ひろしさん、私はもうあなたとの関係はもう終わったの。」
 「くっそー!こんな男さえいなければー!」
 穴と言う穴から様々な汁を飛ばしながらその見苦しいモノが俺に飛び掛る。
 やれやれ、せっかくの至福の時が台無しだ。
 「だいたいな、お前みたいな男がともみのような女を抱えているなんて国家的…いや、宇宙的損失なんだよ!」
 汚物の塊と化したひろしの捨て身の一撃をかわしつつさらりと言い放つ俺…。
 「うるせぇ!お前なんて、俺がいなければ今頃一生惨めにトイレ掃除してた癖に!」
 「ああ、その点では感謝しているよ。
  だが…」
 すっと後ずさり、ひろしを見据え構える。
 「俺達の至福の時を邪魔した代償は万死に値する!
  ひろし…迷わず逝ってくれ!!」
 「そ、そんなバナナーーーー!」
 俺の必殺技を受けて星になるひろし…。
 最期に綺麗な存在になれて奴も本望だろう。

 
 「おっ、あんた…。今日は随分と珍しい組み合わせじゃないか?」
 どこに隠れていたのか、一人の男が現れ、俺に声をかけてきた。
 ひろしを華麗に倒した俺に一層俺に惚れ込んだともみとミキと愛を深め合っていた俺は面倒臭そうにそいつを見る。
 「なんだ、近所の道具屋の男じゃないか。
  なんだ?悪いが、出番を増やしてくれるように頼むのなら相手を間違えてるぞ。」
 「そう邪険にしなくてもいいだろう?
  でも、本当に珍しいな。いつものお嬢様二人はどうしたんだ?
  あんたが外出するっていうなら、絶対にくっついてきそうなものじゃないか。」
 お嬢様二人組み…ああ、聡美と詩織の事か。
 実は聡美と詩織はそれぞれ家の大事な用事があって今日はいないのだ。
 二人とも最後まで俺と買い物に出かけられないのをすごく悔しがっていた…可愛い奴らだ。
 だが、これはこれでよかった気もする。
 よくよく考えても見れば、どちらも大金持ちのお嬢様だ。
 少ない資金で上手く買い物するには彼女達よりも、ともみやめぐみのような生活感のある人物のほうが向いている。
 そこで、休日と言う事もあって、家にいたともみとミキを連れて来たのだが…。

 「ZZZ…。」
 店の中で走り回って疲れたせいか、ミキが眠ってしまったようだ。
 「聡美と詩織は今日は用事で出かけてるのさ。
  あんたがつまらん話ばかりするからミキが寝ちゃっただろうが
  いい加減、店に帰れよ。」
 俺は天使のような顔で寝ているミキの寝顔にキスをし、彼女をおんぶしつつその場を離れた。


 「ねえ、さんま…。」
 「どうしたんだい、ともみ?」
 「…いえ、なんでもないわ。
  …こうしていると、家族みたいねって思っただけよ。」
 「そうだな…。」
 
 俺はともみと話しながらふと、先ほどの道具屋の男の言葉を思い出すす。
 『今日は随分と珍しい組み合わせじゃないか?』
 確かにそうだ。
 よくよく考えても見れば、ミキとともみだけで外へ行くのは本当に久しぶりだ。
 考えても見れば、だいたいは詩織か聡美のどちらか…あるいは二人が入っていた気もする。
 さらに言えば、ともみとふたりでこうしてゆっくり外を歩くなんて、もしかしたら無かったかもしれない。
 確かに俺は女達を全員心から愛し、愛する女達もみな一緒に楽しく仲良くやっているし、それを良しとしている。
 しかし、聡美が時々こぼすように、心のどこかでは愛している男-俺と二人でいたい…俺に思いっきり甘えたいと言う感情があるはずだ。
 寂しがり屋の聡美はそれを積極的に表に出すが、そういった部分をあまり出さないともみや良子は・・・。
 
 「…ともみ。」
 「?」
 「少し…まわり道をして行こう。」
 「え?ええ…でもミキちゃんが…」
 「大丈夫、ミキをおんぶしてもう少し歩くぐらいどうって事は無いさ。
  それに、俺はともみともう少し話がしたいんだ。…駄目かい?」
 「いいえ…よろこんで。」

 夕暮れの町を三人で歩く俺達…。
 「こうしてみると、本当に天使みたいですね。」
 「天使みたいじゃないさ…天使なのさ。
  もちろん、ともみ…君もね。」
 そういえば、ともみは俺の強引さに惚れたと言っていた…。
 強引に外に二人だけで連れ出して欲しかったのかもしれない。
 「ぐぅ~…」
 俺の腹がお決まりのように音を立てて鳴いてくれる。
 「ふふ、それじゃ…そろそろ帰りませんか?お夕飯の支度をしないと。」
 「そうだな。今日の夕飯は何だい?」
 …。
 とにかく、こうしてともみと一層愛し合う事が出来るようになった俺は、すきっ腹を抱えてともみと談笑しながら俺の女達のいる家へと向かった。


もどる