初めてのラブレター(さんまさんの場合)
(2003年 執筆)

これは、僕の友達のさんまさん(以下 彼)が中学生の頃の話だ。
彼にはA子さんという好きな人がいた。彼はA子さんとは、けっこう仲が良かった。たぶんA子さんも彼のことが好きだったのであろう、彼はA子さんに何度も好きな人は誰かを聞かれていた。
そんな やきもきした関係に終止符を打つべく彼はラブレターを書いた。


ラブレターに書くべき内容は決まっていた。
A子さんが何度も聞いてきた問いに答えればいい。
つまり、自分の好きな人が誰なのかを書けばいい。
要するに、俺が好きなのはA子さんです、と書けばいいわけだ。

しかし、それを文章に表現するのは難しい。ここまでお互い牽制し合ってきていきなりストレートに好きだと書くわけにもいかない。「好き」という言葉 を使わずになんとか「好き」という気持ちを表現できないものか。

そこで、彼は何を思ったのか こう考えた。俺はバスケ部だから、この気持ちをバスケ漫画から引用しよう。
そんなバカな。そんな発想きいたことないが、彼はホントにスラムダンクをラブレターに利用した。

そして、彼の発想は飛躍してゆく。俺のこの想いは言葉じゃ表現しきれない。よし、音楽に想いをのせよう。
いや ありえんだろ、とつっこみたくなるが、ホントに彼はスラムダンクと音楽の2つを合わせて、A子さんが好きだということを表現しようとした。そうして完成した彼の文章はこうだ。

「俺の気持ちはスラムダンクのオープニングテーマを聞けば分かる」

いや、意味わからんし。何回きいてもわからんし。ぜんぜん意味わからんし。A子さんが好きだってことが、これっぽっちも分からんし。なぜオープニングテーマなのか分からんし。
ってかんじで、もはやどこから つっこんでいいかも分からんようなラブレターが完成したのだった。


翌日、彼はそのラブレターを持って、A子さんに会いに行き、そして言った。
「俺の好きな人が誰かって、何度も聞いたろう? これに俺の気持ちが書いてあるから」
いや 書いてないだろ、とつっこみたくなるようなセリフを言って彼はA子さんにラブレターを渡したらしい。

そんなわけ分からんラブレターを渡したのに、なぜかその後2人が付き合い始めたのは、20世紀の七不思議のひとつだ。




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